講演内容・動画
講演 2
「地域医療における生活習慣病対策」
磯 博康
大阪大学大学院 医学系研究科社会医学講座 教授
日本は1950年代脳卒中の最多発国であったが、1965年をピークにその年齢調整死亡率が大きく低下、一方で欧米に多い虚血性心疾患は低率で推移し、世界トップの長寿国へと導くことに貢献した。脳卒中の低下には、社会経済の発展に伴う減塩や生鮮食品・野菜の摂取増加、肉体労働の軽減に加えて、全国的な健診体制による高血圧の早期発見・保健指導等の公衆衛生活動、そして国民皆保険制度の元での医療機関での薬物治療・生活指導等の地域医療の貢献が大きい。地域保健医療活動が、血圧値の低下、脳卒中発症率の低下、保健医療の適正化につながることが長期的な疫学研究により明らかにされている。しかしながら、近年大都市の中年期男性を中心とした虚血性心疾患の発症率の上昇、高齢化に伴い動脈硬化が関与する慢性腎臓病、認知症、慢性心不全等の全国的な増加が喫緊の公衆衛生課題である。日本は、地域医療における重症化予防対策の推進、特定健診・特定保健指導の壮年層へ浸透、さらに出生から成人期に至るまでの保健教育制度、健診制度等を活用した望ましい生活習慣の形成・改善を進めることで、生活習慣病予防対策の世界モデルを呈示することが期待されている。