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講演内容・動画

講演 1

「少子高齢社会におけるライフサイクル・アプローチ」

後藤 あや

福島県立医科大学 総合科学教育研究センター 教授 (武見フェロー)

 ライフサイクル・アプローチとは、人々のライフステージを通じた生活上の喪失やレジリエンス(ばね力)を理解して、健康支援をすることである。本発表では、日本の少子高齢社会における母子保健を題材に支援の3 段階を提示する: 1) 計画外妊娠の事例から、プロトコールに沿った育児支援の提供、 2) 震災直後の母子保健対策の事例から、健康情報へのアクセスの向上、そして、 3) 震災後の地域復興の事例から、参加型アプローチの推進。  これら3 段階を、発表者の研究の進捗と重ねて振り返る。産婦人科研修時にはじめた計画外妊娠の疫学研究から、一般的には幸せなイベントである妊娠出産も特に予想外である場合は急な生活の変化によりストレスとなり、前向きな妊娠の計画および育児の支援の必要性を示唆する結果を得た。育児支援を進める中で2011年に福島県の原子力発電所事故が起こり、地域の大学に勤める医師として、そして一住民(母親)としても、健康危機に直面した際の育児支援の難しさを経験した。震災後は、健康情報を分かりやすく伝えることが保健医療と地域の橋渡しのために重要であることに注目して、保健医療従事者対象のヘルスリテラシー研修を展開してきた。 最近では、地域の未来をつくっていく子ども達の声を引き出し、それが復興に反映されるような体制構築を目指した社会学研究を推進している。  以上の活動は全て、地域の専門職と協働して実施しており、地域と共に歩むチーム保健活動こそがライフサ イクル・アプローチの原動力であると考える。